3月10日に挙行された母校の卒業式は、コロナウィルス感染防止の観点から今年度も来賓の出席がありませんでした。学校からの要請で同窓会長が代表で祝辞を送りました。卒業生、保護者、先生方に配布して頂いたそうです。以下に紹介します。

 

祝   辞

卒業生諸君、ご卒業おめでとうございます。校庭の木々があちこちで芽吹きをはじめ、草花の開花がそこここに見られ、春の訪れを告げているこの佳き日に、第74回卒業式が盛大に挙行されましたこと心よりお慶び申し上げます。

川工での3年間はいかがでしたか?私が知る限り、コロナ感染症拡大の中での3年間といっても過言ではなかったのではないかと思います。その影響を受けて勉学は勿論のこと、悉く行事の中止や縮小を余儀なくされ思うような活動が出来なかったこと。諸君を外から見ていて歯がゆさをもちながら心配しておりました。しかしながら、諸君は未曽有のハンデを物ともせずに勉学に、生徒会活動に、部活動に精進し素晴らしい成果を上げ、埼玉県に川口工業高等学校ありとその名を轟かせていただきました。地域の皆様方からも川口工業高等学校は素晴らしく良くなっているとお褒めの言葉をいただきます。諸君は川工の誇りです。本当にありがとうございました。

私は川口市立青木中学校の校長をしておりました。その時のエピソードです。公立高校受験の発表の日の出来事です。その子は第一希望の私立高校を合格していたのですが、廊下で涙を流して泣いているのです。心配になった私は「どうしたの」と声を掛けました。その子は「友達が希望の学校に落ちてしまったので」と泣いていたのです。その涙は友の失敗を残念に思う優しい涙でした。私は今でもその優しいその子の姿を思い出します。

二つ目は、3年生に校長面接を行いました。「君はどこの高校へ行きたいのかな」と尋ねると「川口工業高校へ行ってコンピューターの勉強をして、コンピューター会社に努めたいのです」とその子は答えました。目的意識をもって素晴らしいと思うけど「どうしてそのような希望をもったのですか」とさらに尋ねると「ここまで僕を育ててくれたお母さんを楽にしてあげたいからです」と真剣なまなざしで答えました。私の胸に熱いものがこみ上げてきました。世の中を見ると利己的な考えが蔓延している現状があります。児童虐待、毎日のように報道されている殺人事件、凶悪犯罪、詐欺事件、青少年の非行、そして、世界に目を向けると国と国との争いが顕著にあり世界の平和が脅かされております。

卒業生諸君、184名の道はそれぞれに異なりますが川工で培った力を土台にして「友の為に涙を流し」「家族の為に汗を流し」「社会や人の為に尽くせる」優しく大きな人材となってご活躍されんことを期待しております。私たち同窓会は応援しています。

保護者の皆様、逞しく育ったお子様のご卒業衷心よりお祝い申し上げます。今まで誠にご苦労様でした。最後になりますが、染谷校長先生を始めこれまで素晴らしい人材の育成にご尽力を賜りました、お一人おひとりの先生方に感謝を申し上げ祝辞といたします。有難うございました。

埼玉県立川口工業高等学校 同窓会 会長 坂本 大典